肺血流シンチグラフィは、肺動脈から末梢肺毛細血管へ向かう血流分布を画像化する検査です。代表薬剤は 99mTc-MAA です。MAAはmacroaggregated albumin、大凝集アルブミンのことで、静脈注射後に右心系を通って肺動脈へ流れ、肺毛細血管に一過性に捕捉されます。
ここで大切なのは、肺血流シンチグラフィは「空気の入り方」ではなく、肺動脈系の血流分布を見る検査だという点です。肺換気シンチグラフィは 81mKr、133Xe、99mTcガス、99mTcエアロゾルなどで換気分布を評価します。
成人で用いる99mTc-MAAの投与量は、教科書の整理では185 MBqとして押さえます。過去問の「成人静態イメージングの投与量」では74〜148 MBqという選択肢が出ることもありますが、このクエストでは教科書記載を優先し、肺血流シンチ単独の投与量は185 MBqとして学習します。
99mTc-MAAは粒子状の製剤であり、肺毛細血管に一過性に捕捉されます。このため、集積の分布は投与時点の肺血流を反映します。肺塞栓症などで肺動脈が閉塞すると、その末梢にはMAAが届かないため、集積低下または欠損として描出されます。
MAAによる毛細血管の塞栓は全体の約1%程度と少なく、数時間で分解・再循環するため、通常の検査量では大きな問題になりにくいと整理します。ただし、肺高血圧症、重篤な右左シャント、乳幼児などでは粒子数を減らすなどの配慮が必要です。
肺塞栓症では、肺動脈血流が低下します。一方で気道が保たれていれば、換気は比較的保たれます。そのため、肺血流像では欠損があるのに、換気像では大きな低下がない、という 換気血流ミスマッチ が重要です。
典型的には、肺血流像で区域性または楔状の欠損がみられます。肺炎や無気肺では換気も血流も低下しやすく、COPDではまだらな不均一分布となることがあります。肺塞栓症では「血流異常が換気異常より著しい」と覚えると、問題を解きやすくなります。
肺は立体的で重なりが多いため、前面像のみでは十分ではありません。前面、後面、側面、斜位像などの多方向撮像を行い、欠損の部位や範囲を判断します。必要に応じてSPECTを追加すると、欠損の位置を立体的に把握しやすくなります。
99mTc-MAAの分布は、投与時の体位に影響されます。座位・立位では重力により下肺野優位、仰臥位では背側肺野優位になりやすいです。撮像時の体位ではなく、投与時の体位が重要である点に注意します。
投与時は安静呼吸下で、ゆっくり静注します。息止めは原則不要です。また、注射器内へ血液を逆流させて確認する操作は避けます。血液とMAAが混ざると凝集や不均一分布の原因となり、局所高集積や検査精度低下につながる可能性があります。
検査前の長時間絶食は通常必要ありません。甲状腺ブロックや下剤なども通常の肺血流シンチでは基本ではありません。
右左シャントがあると、MAAが肺毛細血管で十分に捕捉されず、体循環へ流入することがあります。その場合、脳や腎臓などに肺外集積がみられることがあります。右左シャントが疑われる場合は、肺だけでなく全身像を撮影して肺外集積を確認することが重要です。
右左シャントは絶対禁忌ではありませんが、重篤な場合には投与粒子数を減らすなどの調整が必要です。
肺換気シンチグラフィでは、吸入した薬剤の肺内分布から局所換気を評価します。81mKrは半減期が約13秒と非常に短く、持続吸入による換気像に適しますが、洗い出し評価には不向きです。133Xeは閉鎖循環式呼吸回路を用いて、換気分布、肺容積分布、洗い出し分布を評価できます。
99mTcガスや99mTcエアロゾルでは換気SPECTが可能です。肺血流=99mTc-MAA、肺換気=81mKr・133Xe・99mTcガス/エアロゾル、と分けて覚えます。
肺血栓塞栓症:区域性・楔状の血流欠損。換気は保たれやすくV/Qミスマッチ。
COPD:換気障害に伴い血流も不均一。まだらな分布低下を示すことがあります。
高安病:肺動脈狭窄・閉塞を伴う場合、肺血流低下を示すことがあります。
肺高血圧症:血流分布の不均一化や末梢血流低下を評価します。強い肺高血圧では粒子数への配慮が必要です。
右左シャント:脳・腎臓などの肺外集積を確認します。
核医学画像では、病変部に集積が増えるものを陽性像、集積が低下・欠損するものを陰性像と整理します。肺塞栓症では、99mTc-MAAが閉塞部位より末梢へ届かないため、陰性像として欠損を示します。
似た考え方として、肝網内系シンチで肝癌が欠損となるのはKupffer細胞が乏しいためです。一方、骨転移の骨シンチや201TlClによる脳腫瘍では病変部高集積を示しやすく、陽性像として整理します。